部長
原田 尚重(はらだ なおしげ)
資格等
- 日本救急医学会専門医
- 日本救急医学会指導医
- 日本赤十字社東京都支部救護員指導者
- 日本救急医学関東地方会幹事
- JPTECインストラクター
- JPTEC関東世話人
- JPTECインストラクター
- 災害派遣チーム(DMAT)隊員(厚生労働省医政局、東京都)
- 日赤災害医療コーディネーター
- 日本赤十字社看護師特定行為研修指導者講習会修了
- 全日本病院協会主催看護師特定行為に係る指導者リーダー養成研修会修了
- がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了
武蔵野赤十字病院は救急医療を重要な診療機能の柱と位置づけています。
当院救急センターは大きく分けて、救命救急センターと救急外来からなっています。
救命救急センターは生命の危機にさらされた重症傷病者や、全身管理を必要とする特殊な病態の方を対象としています。
集中治療施設ですので一般診療の受付はありません。
また各科のスタッフと協力して、救命救急専従医が核となって24時間体制で診療に当たっています。
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主な傷病は、脳血管障害(脳卒中)、重症心疾患、重症呼吸不全、重症膵炎、肝不全、敗血症や多臓器不全、事件事故や労災などによる多発外傷、さまざまな中毒、ショックを伴う傷病、熱傷、窒息、溺水、環境異常(熱中症、低体温症)、心肺停止などがあげられます。
また適応がある場合は積極的に最新の治療法や、エビデンス(科学的医学的根拠)に基づいた医療、ガイドラインに基づいた医療を導入し、医療水準の向上と標準化を推進しています。 平成29年度の救命救急センター総入院患者数は1,431名であり、平均在室日数は6.9日となっています。 より重症の患者さんを収容しているのと同時に、集中治療を必要としている方のために、常に病床を確保するよう努力しています。
部長
原田 尚重(はらだ なおしげ)
資格等
役職・氏名 | 専門領域 | 資格等 |
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副部長 原 俊輔 (はら しゅんすけ) |
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副部長 蕪木 友則 (かぶらき とものり) |
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医師 三浪 陽介 (みなみ ようすけ) |
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医師 寺岡 麻梨 (てらおか まり) |
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医師 鈴木 秀鷹 (すずき ひでたか) |
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医師 石丸 忠賢 (いしまる ただよし) |
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医師 河口 拓哉 (かわぐち たくや) |
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医師 村松 俊 (むらまつ しゅん) |
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医師 高野 日出志 (たかの ひでし) |
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医師 渡辺 真那斗 (わたなべ まなと) |
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医師 吉田 耕輔 (よしだ こうすけ) |
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医師 松浦 暢孝 (まつうら のぶたか) |
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救命救急センターは、現在全国で286ヵ所、東京都で26ヵ所ありますが、当院救命救急センターは昭和52年に全国に先駆けて、最初に指定を受けた東京都3ヵ所のうちの一つです。 特に生命にかかわる重症な急性傷病の方々に対して、その命を守る「最後の砦」、すなわち地域救急の要として国および東京都から特に指定された施設です。 平成11年4月に体制を一新し、救命救急医療を専門にした専任専従医を核に各科スタッフが協力し、設備施設を拡充させて、救命に必要な検査や手術が24時間できる体制を整えています。
救急専用の重症病床を30床(ICU8床、HCU22床)確保しています。 また重症者救急搬送用に特別に許可を得たヘリポートも病院屋上に設置し、多摩あるいは伊豆諸島、他県などの広域からの救急ヘリ搬送に運用しています。
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武蔵野赤十字病院では、令和2年10月1日よりドクターカー事業を開始いたします。ドクターカー事業とは、みなさまが体調不良やケガをして救急車を要請した場合、消防庁の指令員が通報内容から重症と判断すると、救急車への出動指令と同時に当院にドクターカーの要請をします。要請が入ると、当院の救命救急センターの医師等がドクターカーにて出動し、現場や救急車内(病院への搬送中も)にて救急隊とともに診察し、必要に応じて医師にしかできない医療処置を行います。
東京都内においては、現在、救急隊がみなさまのところに着いてから病院到着までの間、平均約30分かかっています。そして、病院到着後、診察・治療が始まります。しかし、医師等がドクターカーで病院外に出動することによって、医師が診察・治療を開始する時間が早まり、みなさまの生命や機能の悪化を防ぎ、その改善が図れる可能性が高まります。短い時間ですが、この時間がとても大切になってきます。つまり、早期に医療介入を行い、みなさまの健康を守ることがドクターカー事業の目的です。
当院は地域中核病院として、地域から最も求められる機能の一つである救急搬送応需率の向上へ努めるとともに、ドクターカー事業の運営を通して地域医療へ貢献して参ります。
医師がドクターカーにて出動し、重症な状態に陥っているみなさまを診察・治療した場合、病院の受診(保険診療)と同様に医療費がかかり、みなさまにその一部をご負担いただくことになります。ご了承のほどよろしくお願いいたします。
*ドクターカー
出動時間:平日9:00~17:00
出動範囲:武蔵野市全域、小金井市全域、西東京市の一部、練馬区の一部
平成29年度の救命救急センターへの搬入数は1,648例うち入院診療数は1.431例、対前年比+324例の増加、救命率68.4%。搬入数増加に伴い当科で扱う緊急手術も例年の50例前後から86例に増加した。疾患分類でみると【( )内は前年度増減数を示す】心肺停止202例(+19)外傷194例(+26)脳血管障害155例(+45)循環器疾患142例(+61)呼吸不全88例(+1)感染症69例(+13)消化管出血49例(-1)急性腹症49例(+3)血管緊急症62例(+21)中毒45例(+30)意識障害33例(+28)となっています。
また近年妊婦に特化した救急搬送、通称スーパー母体救命システムの運用も増加しており実際に則したシュミレーションを毎月開催し可能な限り応需できるよう産科との連携を密にしています。いっぽうで高齢者(75歳以上)の入室件数は全体の41.8%を占め(昨年度より0.1%増加)特に85歳以上の超高齢者も16.3%となっており日々高齢化社会の波を実感しています。救命救急医療といえども終末期医療を見据え、ひたすら救命・延命をはかるのではなく全人的な医療を実践できるよう配慮しています。院内に対しては院内急変対応(院内ホット体制)も当科の重要な責務であり、本年度は昨年度より21件減少し61件の要請に対応しました。加えて「これから容態が悪化しそうな患者さん」に対して周知させるRRS(Rapid Response System)の件数は159件と昨年度同様に要請が多くRRSの増加によって院内ホットの減少が見込まれるのが理想ですが今後の事例検討、事後検証を行い更にハイレベルな医療安全に貢献できればと願っています。
心肺停止 | 202 |
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外傷 | 194 |
脳血管障害 | 155 |
循環器疾患 | 142 |
呼吸器疾患 | 88 |
感染症 | 69 |
消化管出血 | 49 |
血管緊急症 | 62 |
急性腹症 | 49 |
中毒 | 45 |
意識障害 | 33 |
その他 | 343 |
2017年度救命救急センター搬入数 | 1431 |
救命救急科は、一般的な入院患者に比較して重篤な患者が多く死亡率は高い。呼吸や循環、電解質の多くの問題に対してプロトコールに則った標準的な治療を行うことで死亡率を改善させる試みをしている。我々の集中管理の妥当性に関して、一般的に用いられる予測死亡率と実際の死亡率を比較した。
集中治療室での予測死亡率は種々あるが、主にヨーロッパで用いられる重症度スコアがSAPSⅡ score がある。血圧、意識レベルなどの生理学的な変数に年齢、入室形態(術後患者なのか、内科患者なのか)、基礎疾患の有無などを考慮したスコアリングシステムである。 入室24時間での最悪値を用いて、このスコアは算出される。 当科では集中治療室入室全患者の SAPSⅡを算出しており、このスコアから以下の式で予測死亡率が算出される* 。
*Crit Care Med. 1998 Nov;26(11):1793-800.
今回、2020年4月から2020年6月の間に集中治療室に入室した患者でSAPSⅡを算出し、予測死亡率とICU入室した患者の実際の死亡率を検証した。なお、2018年は1年間のデータで、2019年、2020年は3か月間のデータで算出している。
ICU入室患者総数 | SAPS Ⅱ score (Median(IQR)) | SAPS Ⅱによる 予測死亡率 (Median(IQR)) | 全死亡数 | 粗死亡率 | |
---|---|---|---|---|---|
2020年 | 115 | 41.0 (28.0-59.3) | 24.7% (7.94-64.0) | 22 | 19.1% |
2019年 | 180 | 47.0 (33-62.0) | 39.2% (14.0-73.1) | 22 | 12.2% |
2018年 | 594 | 46.0 (30.3-63.0) | 37.0% (10.6-73.6) | 60 | 10.1% |
SAPS Ⅱ scoreから算出される予測死亡率と粗死亡率を比較すると、死亡率が低下していることから、集中治療室管理が適切に行われている可能性がある。加えて、JIPAD**(Japanese Intensivecare PAtient Database)の2016年の年次レポート(http://www.jsicm.org/jipad/)では、ICU入室患者のSAPSⅡ scoreが33(25-45)であり、他の施設と比べても入室患者の重症度は低くなく、むしろ高い傾向がみられている。
このことから、当集中治療室での管理の妥当性が評価されたと思われる。今年度は新型コロナウィルス感染症対策をICUではなく、HCUで実施した。そのため、本来はHCUに入室していただく患者さんをICUで管理するといった流動的な対応をおこなったことで入室数が変化したと思われる。
**日本集中治療学会が運営している日本の多施設ICUデータベースであり、主に大学病院や市中大病院のICUの治療成績や入室患者のデータを集計している。
せん妄とは、一過性の意識障害とされており、入院患者に発生した場合は、その後の脳機能障害や生命予後に悪影響を与えることが分かっている*。せん妄への介入に関しては、様々な手法がとられており、当集中治療室でも ABCDE アプローチや環境整備などを積極的に行って、せん妄発症予防に努めている。
入院後 24 時間以内のデータを用いて、集中治療室におけるせん妄発症の予測をおこなうスコアリングシステムに PRE-DELIRIC(PREdiction of DELIRium in ICu patients)がある。これは多施設観察研究に基づき作成されたものである**。このスコアリングシステムから当集中治療室の入室患者の予測せん妄発症率と実際のせん妄発症率を比較する。
せん妄発症に関しては、Intensive Care Delirium Screening Checklist(ICDSC)が 4 項目満たした場合をせん妄と判断している。
今回、2018年5月から2018年8月の間に集中治療室に入室した患者で PRE-DELIRIC を算出し、予測せん妄発症率と ICU 入室した患者の実際のせん妄発症率を検証した。
ICU入室患者総数 | 年齢 (Median(IQR)) | PRE-DELIRICによる 予測せん妄発症率(Median(IQR)) | せん妄発症数 | 発症率 |
---|---|---|---|---|
180 | 66.5 (54.2-77) | 57.5% (19.3-94)) | 135 | 75% |
本検証では、予測せん妄発症率に比べて、当集中治療室はせん妄の発症率が高いことが分かった。この予測せん妄発症率が作成されたデータベースは予定入室患者が48%も占めている。
当集中治療室はほぼ 100%が緊急入室患者であることからリスクは高く、必ずしもこの予測との乖離が当集中治療室のケアの質を決定しないが、ひきつづき、せん妄予防を集中治療室スタッフ全員で努めていく必要がある。
*Crit Care Med 2010 ; 38 : 2311-8
** BMJ. 2012 Feb 9;344:e420
*** Intensive Care Med, 27(5) : 859-864, 2001.
一般救急診療はいつでも対応します。
救急センター1階にて平日日中は内科総合診療科が、また、夜間休日は内科・外科・小児科・産婦人科・脳神経外科・整形外科の各科医師が診療しています。迅速的確な救急診療に努めていますが、より重傷で緊急度の高い方が診療や入院で優先されますので、状況によりお待ちいただく場合もあります。
どうか御理解・御協力いただきます様お願い致します。